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いつか、届く、あの空に。

Lump of Sugerの第一作、『Nursery Rhyme』がかなり出来の良いものだったので、第二作の『いつか、届く、あの空に。』をプレイする事にしました。

一日かけてふたみ、此芽ルートをクリアしました。出来はかなり良いですが、少々難しいところもあるかなー?

以下ネタバレ。
芸術関係に才能のある人材ばかりを生み出す巽家の息子、策。しかし彼にはいかなる芸術の才能もありませんでした。彼も幼少の頃から必死に様々な芸事に励んだのですが、何一つ才能を示しそうな分野はなかったのです。

そして彼は一族の当主より「好きに生きなさい」と言われてしまいます。それは「お前には何の才能もないから」という言葉と同義。深く傷ついた彼は分家の唯井家がある空明市へと向かいます。その家から巽の者を一人よこしてほしいという願いを受けたのですが、一族の誰も行きたがらなかったからです。せめてその任務を受ける事で一族に認められたかった……いや、居場所のない家から逃げ出したかったから。

そこには「オマエのヨメだ」という一人の少女が待っていました。

となるとNursery Rhymeと同じ系統のほんわかラブストーリーかと思われるのですが、本作はかなり方向を変えてきました。序盤のふんわりした雰囲気とは違い、かなりシリアスで血みどろ、陰惨な展開になっていきます。

ヒロインは三人。ヨメを自称するふたみ、お姫様のような此芽、それと穏やかでなにもかも知っているような言動をする傘です。

原画はZIPの萌木原ふみたけですので絵の良さは問題なし。音楽、システムなども文句はありません。キャラ立てもなかなかです。

この作品の評価はやはりそのストーリーを気に入るかどうかでしょうねえ。いや、ストーリーそのものよりも特に後半、プレーヤーを相当置いてきぼりにして謎を積み重ねていく演出かな。正直結構わかりにくかったりします。まああんまり解説をしてしまうとつまらなくなってしまうでしょうから仕方ないのですが。

あと、ストーリーにも設定にもほとんど関係はないはずですが、どことなくFate/stay nightの雰囲気があるよーな気もします。演出のいくらかはFateを参考にしているのではないかなあ。それは別に悪くないのですが。

それにしても傘は置いておくとしても、ふたみと此芽のどちらを選ぶかはかなり難しい問題じゃないですかね?どちらかを選べばもう一方はかなり救いのない事になりそうな気がしますが。

ストーリーの出来から言うとやはりふたみルートが自然です。序盤がふたみメインでしかも長いので、途中から此芽や傘に行くのはちょっとどうかと思わせられますし、ふたみルートでないと問題の解決にはならないような。

あと気になったのはふたみルートと此芽ルートで基本設定が異なっているのではないかということです。以下は本当にネタバレなので間違って読んでいる人はここでやめといて下さい。






ふたみルートでは実は本家であり、この街……いや、世界を守るために百年に一度人身御供を捧げてきたふたみの実家が、その人身御供であるふたみに力を与える為に策の命を欲したために、ふたみが知らないうちに策の生命を「食っていた」ことになっています。

そして此芽ルートでは命尽きる前に娘を守ろうと敵対する桜守姫の後継者である此芽を殺そうとしたふたみの母親から、此芽を守るために身を投げ出した策を助ける為に、此芽が自分と策の命を繋げたことになっています。

基本設定がここまで違うと実質別の話になってしまうと思うんですが。どちらかを選ぶともう一方の謎も救いもなにも不明になってしまうのはまあいいとしても、これはちょっと違和感があります。

傘のルートならこのあたりのつなぎになるのかしらん。どう見ても「ヒロインが二人だと足りないから」という理由で出てきたようにしか見えないのでやる気がしないのですが。これなら愛々々のほうがヒロインにふさわしいのでは?いや、それではふたみに対してなんのアドバンテージもないか。

というわけでふたみルートがあまりに本筋過ぎて他のストーリーが弱いというのが本作の問題かも、と傘をやっていないにも関わらず思っております。

しかし出来は良かったので、第三作がでたら買うでしょう。

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