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ずいぶんとお偉いようで…

「iPod課金」は「文化を守るため」――権利者団体が「Culture First」発表

だそうです。相も変わらず理性よりも感情に訴えかける、知性に欠けた論理を展開しておりますが、まあそれは大衆にわかりやすいレトリックを使って「よくわかんないけど文化人達がそういってるんだし」みたいな反応を引き出そうという高度な戦術なのかもしれません。

にしても酷いものですな…。
>Culture Firstは、文化を守るために私的録音録画補償金を守るべき──
>というのがその主張だ。87団体は「補償金があるからこそ私的なコピーが
>自由にできる」とした上で、「受け取る補償金の額が激減し、権利者の
>保護レベルが急激に低下した。危機的状況にある」と訴える。

本来知的創作物は一切の制限を付けず、社会に還元するほうが全体の利益になります。ただしそれでは創作者が奉仕者になってしまい、創作のインセンティブが弱くなるであろうということで、仕方ないから制限付きで独占権を認めよう、というのが著作権の意義であろうと考えます。

しかし最近の自称権利者達の主張は、「文化は尊いものでそれを生み出す創作者は貴重で偉い存在。そして生み出された創作物は保護されて当然」というものになっているようです。

いやー…本来はお情けで保護してあげてるだけなんですが。私も小説を書きマンガを描きデザインをしてゲームだってちょっと作ったことがあるし、という創作側とも言えないこともない人間ですが、保護されて当然なんて思いませんがね。なにが「おたから」ですか。

言っておきますが、文化なんてものは明日のご飯に困らない幸せな連中の遊びです。職もあり金の当てもあり買うものもいくらでも溢れているしいざとなれば国が少なくとも死なない程度の手当はしてくれる、そんな状況にいるから文化なんて世迷い言にうつつをぬかしていられるのです。そんなものに関わっている連中はろくな人間じゃありません。私も含めて。

>補償金があるからこそ私的なコピーが自由にできる

本来コピーなんて自由です。しかし現実には霞を食って生きるわけにもいかず、お金が動かないと創作物の流通もままなりませんし、そうなると受け手にも送り手にも不都合ですからそれを制限して対価を受け取れる仕組みを作っただけです。

繰り返しますが、文化なんてなくたって誰も死にません。もちろん人生には潤いが必要で、文化というものが大切だと言うことは認めます。というか私のようなオタクなんてそちらがメインで実生活はおまけみたいなものです。そりゃそうですが、だからといって面だって「文化は宝」なんて大まじめに言い出すようではおしまいですよ。「俺たちは生きるためにはなんの必要もない酔狂なものに狂う趣味人なのさ。駄目人間だよ」という態度がふさわしいのです。

そんな駄目人間だけど、それでも一芸に秀でていて他の人を喜ばせることが出来るから生きていくことが出来る、なんと有り難いことであろうか、という感謝のココロを持つならともかく、ずいぶんと偉そうな態度をとるもんです。

それと

>文化振興を語る上で、ソフトとハードを鶏と卵に例えることが多いが、
>文化の場合は作品が先に生まれ、複製機器が後で普及する。文化の
>担い手による作品がまずある。始めに文化ありき、だ

これもまたずいぶんと思い上がった意見ですね。映画が出来てから映写機とフィルムが発明されたわけじゃありません。特に最近の文化は大量複製と大量消費が前提です。確かにビデオデッキだけ転がっていても意味がありませんが、各家庭にそれがなければレンタル店に大量のセルビデオをさばくことはできませんよ。

以前椎名和夫さんと小寺さんの対談で、決して椎名さんも欲ボケがちがちの既得権益者というわけではないということはわかりましたが、それでもこれはあんまりでしょう。そりゃ安定した楽な収入が欲しいのはわかりますが、自分たちがそもそも浮き草で、そして自分で望んでそのような立場になったのだということは自覚するべきです。偉そうに「保証金をよこせ」というのではなく、せめて「これ以上簡単にコピーされると著作権の保護が目指している本来の意義が薄れてしまうので、なんらかのバランスがとれませんか」というべきではないですかね。

ま、私としてはそこまで保護してもらわないと存続できない「文化」なんぞ滅びてしまえと思うのですが。

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