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Das Boot

Das Boot(U・ボート) ディレクターズカット版を観ました。

監督自らの再編集で映画上映時にはカットされたシーンを大幅追加。なんと三時間半という大作になっています。特に前半部分の艦内での出来事がいくつも追加されているのでさらに潜水艦の特殊な生活が印象強く描かれています。

それにしてもやはり緊迫感に満ちあふれた傑作ですねこれは。狭く汚く厳しい環境でまだ少年と言ってもいいくらいの年頃の兵がまさに死と隣り合わせの軍務に耐えるのです。戦争前半に持っていた技術的・戦術的優位はすでに消え去り、広大な大西洋をわずか十数隻で封鎖することを求められ、敵に発見されれば圧壊に怯えながらひたすら潜行して耐える……凄まじい恐怖です。
Uボートの設計保証深度は90m。しかし実戦では150m以上まで潜らねば撃沈されます。船体はきしみ、ボルトが弾け飛び、歪みに耐えかねたあちこちから水が噴き出します。いつ限界を超えて卵の殻のようにくしゃり、と潰れるか……。

潜水艦が圧壊すれば中の人間は巨大な質量を持った水に潰されるか、ぐしゃぐしゃになった船体に潰されるか、とにかく確実に悲惨な死を迎えます。深く潜れば潜るほどその危機は飛躍的に高まります。浮き上がれば爆雷の直撃を受けてやはり圧壊します。敵に殺されるか、水圧に殺されるか……それとも、船体が保つか。

この頃の潜水艦は今の原潜のように潜りっぱなしは出来ません。ディーゼルエンジンなので原則として浮上航行します。戦闘時のみバッテリーに切り替えて潜行するのですが、酸素もバッテリーもそう長時間は保ちません。魚雷も高価であり搭載数も少ないので本来ならば輸送船などは浮上して艦上に据え付けられた主砲で撃沈するのが基本です。

しかしこの頃になると連合軍側も高速輸送船を数十隻束にして駆逐艦と護衛空母で厳重に護衛しています。潜望鏡すらレーダーで探知されるのにのこのこ浮き上がって主砲など撃っていては簡単に撃沈されます。ウルフパック戦術を取れるほどの数ももはやなく、元々小型で外洋航行に向いていないUボートは信じられないほどの危険を冒して戦っていたのです。

無論危険なのは狙われる輸送船も同じ。護衛されているとは言え優れた指揮官に率いられたドイツUボートは恐るべき敵でした。

輸送船団を襲撃したUボートは見事に魚雷を命中させ、艦内は歓声に包まれます。しかし即座に護衛艦に逆襲され、雨のように降る爆雷にさらされます。歴戦の士官すら恐怖に狂う艦内では水が噴き出し、必死の復旧作業が続きます。

なんとか逃げ切り、浮上した彼らは燃えながらも浮かんでいた輸送船に止めを刺そうと魚雷を発射します。まさかもう人はいないだろう、と思っていた彼らが見たものは、火だるまになりながら海に飛び込む船員達でした。

実は戦時中、被弾した場合は救助される可能性は極めて低いのです。なにしろ救助のために留まっていては別の船が被弾するかも知れません。したがって船団は魚雷を喰らった船は船員ごと見捨てて直進するのです。

「Help me! Help me!」という悲鳴を浴び、若い士官は泣き出します。それでも救助は当然出来ません。Uボートは任務中で、しかも捕虜を乗せる設備などないのです。「後退せよ」という艦長の命令で逃げるように後進するUボート。魚雷命中の時の高揚感はすでにありませんでした。

魚雷も尽きたUボートは帰還しようとします。しかし司令部からはスペイン経由で……なんとあのジブラルタルを抜けて帰投せよという命令が届きます。わずか11kmの幅しかないジブラルタル海峡は厳重というのも馬鹿馬鹿しいほどの警備がなされており、突破など不可能と言われていました。しかし命令は命令。艦長は機関を停止して潮流に乗って突破するという案を出します。

そしてその案は見事に成功……するところだったのですが……。

この映画はここからがクライマックス。限界をさらに越えたところで示される人の意地、脆さ、そして強さ。いたずらにヒューマニズムを歌うでもなく、おおげさな台詞を使うでもなく、むしろ艦内の様子を忠実に描写したことがかえって戦争の恐ろしさと人の素晴らしさを強く印象づけます。

ラストは賛否両論あることで有名な作品でもありますが、このラストがあるからこそUボートは名作と言われるのかもしれません。とにかく映画が好きな人には一度は観てほしい作品です。

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