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読書

カッコウはコンピュータに卵を産む』を読みました。

天文学者の削減に引っかかってシステム管理者をやることになった主人公が、最初の力試しあるいは新人の半端仕事として任されたのが、計算機センターの使用価格に食い違いがあるようなので調べてくれ、という仕事。しかもわずか75セントという端金の問題です。

どうせ学生バイトが作った料金計算プログラムのどこかにバグがあるのだろう、と高をくくって調べていた主人公ですが、確かにプログラム自体は洗練されてはいなかったものの間違いも無し。ではどこで間違った結果が出てしまったのだろう……。

物語はここから始まります。
やがて彼は今は在籍していない科学者のログインを見つけます。このユーザの存在が75セントの誤差の原因ではないか、と思って調べ始めた彼ですが、そのうちに奇妙なことに気付きます。

誰か、このシステムに無断で入り込んでいるんじゃないか?

大学のコンピュータシステムの管理者権限が乗っ取られている可能性に気付いた彼はさらに調査を進めます。しかしこの時点では彼も、そして上司達もせいぜい学生の悪戯だろうとしか思っていませんでした。

ところがそのクラッカーは大学を踏み台にして軍のコンピュータに侵入していました。それでもまだ関係者はそれほどの危機感は持っていませんでした。せいぜいちょっとコンピュータが得意な学生が火遊びをしているだけだろう。

そう思いながらもクラッカーを捕まえようと調査を進めていくと、やがて話はじわじわと大きくなっていきます。意外なほどに脆い軍のコンピュータシステムの防御、何段階もの中継点を飛んで来ているクラッカー、そして盗み出される情報の危険さ……。

はじめは主人公の訴えを無視していたFBI、空軍、CIAなどもやがて本腰を入れ始めます。役所の縄張り争いや面子などで主人公は思うように調査を進めることが出来ずに苦労しますが、このへんも物語の面白さです。

さらに主人公はどちらかというと権力に批判的で、CIAや軍などを嫌悪している人です。しかしクラッカーを捕まえる為にはまさに権力の象徴である彼らと協力せねばならず、しかも実際に顔を見て話し合った彼らは決して悪の組織を構成する冷血非道な人達ではなく、むしろ有能ではあるものの普通の人々でした。主人公はCIAなどを嫌う友人達とCIAの友人達との間で板挟みになることもしばしばです。

そして、やがて判明したクラッカーの正体と目的は、悪戯好きの学生などと言うちんけなものではありませんでした。

この物語の凄いところは、これが「実話」だと言うことです。わずか75セントから始まった新人管理者のちょっとした調査がやがて国際的なスパイ事件に発展していく……まさにスパイ小説を地でいくような話が実際に存在したのです。

30年も前の話ではありますが、この話に出てくる教訓は未だに通用するものが多く、コンピュータに関係している人であれば是非読んでおいて欲しい本でした。

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